新聞記事 2006年1月


2006/1/1 水俣病50年 第1部 もう一つの産廃 (1)「命の水が・・・」 不安募らす住民【熊日】

水銀ヘドロを封じ込めた水俣湾の埋め立て地(中央)。水俣病被害者の緒方正人さんは「産廃処分場だ」と指摘する=水俣市
 熊本県の南端、水俣市を南北に流れる湯出川。市中心部から七キロ離れた上流域に、元市職員の下田保冨さん(81)=湯出=は生まれ育った。生活の要となる水を、自宅脇の山腹にわき出す水にすべて頼っている。

  水源は自宅から二百メートルほど入った竹林の中。巨岩の下から豊富にわき出る水は、いったんポリ容器の中にたまり、パイプで自宅に通じる。「私も父も、先祖代々この水で暮らしてきた。ろ過も消毒もしない。水質検査では何の雑菌も検出されませんよ」。誇らしげな表情だ。

  水源がある山腹を登りきった同市長崎の木臼野集落に、かつてゴルフ場の建設予定地だった広大なスギ林が広がる。

  今ここに、民間の産業廃棄物最終処分場の建設計画が進んでいる。

  下田さんは、建設反対運動を展開する市民団体の世話人の一人。予定地直下の山腹に生活に使われる水源が八カ所あることを調べ、処分場建設による湧(ゆう)水の枯渇や汚染の心配などを訴える。「命の水を汚そうというのか」。下田さんの顔が曇る。


巨岩の下からこんこんとわき出す下田さん宅の水源。豊富な湧水に感謝し、年2回の彼岸にはお神酒をささげるという=水俣市
  事業者のIWD東亜熊本(水俣市)の計画では、約九十五ヘクタールの敷地に埋め立て面積九・五ヘクタール、同容量二百四万三千立方メートルの管理型処分場を建設する。焼却灰や汚泥、廃プラスチック類、一般廃棄物(主に家庭ごみ)など十四種類を処分する計画。廃油、廃酸、動物性残さなど「中間処理が可能なものは除く」(同社)という。

  小林景子社長(53)は「不適正処理から自然を守るには、自然を侵す恐れのある廃棄物を適正に管理することが求められる。処分場以外の敷地を自然保護区域にし、両方が必要だということを知ってもらう環境教育の場になる」と理解を求める。

  湯出川は下流域で水俣川と合流、市の水道水源取水地を経て二キロほどで不知火海(八代海)に注ぐ。そこは、かつてメチル水銀汚染に見舞われ「死の海」と言われた場所だ。

  メチル水銀に汚染された魚介類を食べた熊本、鹿児島両県の人々が発症した水俣病は、認定患者だけで二千二百六十五人(うち死亡千五百六十七人)。政治決着などによる救済を含め被害者は二万人以上、一説には二十万人とも言われる。被害者の全面救済は今でも未解決の社会問題だ。メチル水銀は、チッソ水俣工場が現代生活に欠かせないプラスチック製品などの原料アセトアルデヒドを製造する過程で発生した。

  その不知火海の一角、水俣湾に五十八ヘクタールの広大な公園がある。ここは、百五十一万トンもの高濃度の水銀ヘドロを封じ込めた埋め立て地だ。

  水俣病被害者の緒方正人さん(52)=芦北郡芦北町=は指摘する。「水銀ヘドロは紛れもない産廃で、水俣湾の埋め立て地こそ産廃処分場だ。産廃処分場はこれ以上、水俣にいらない」

     ◇     ◇

  一九五六(昭和三十一)年五月一日、チッソ付属病院長が水俣保健所に「原因不明の疾患」の発生を届け出た。それが水俣病の公式確認とされ、今年で丸五十年を迎える。「水俣病50年」では、高度経済成長の一方で起きた未曽有の公害・水俣病が映し出す日本の今をシリーズでリポートする。第一部は水俣の地で過熱する産廃問題を考える。

2006/1/3 水俣病50年 第1部 もう一つの産廃 (2)患者らに横たわる企業不信 【熊日】

環境教育で水俣病資料館を訪れた小学生に産廃問題を訴えかける杉本さん。「ごみを出さない生活を考えてほしい」と願う=水俣市
 昨年十二月七日、水俣市明神町の市立水俣病資料館。水俣病被害の語り部を務める認定患者の杉本雄さん(66)=同市袋=は、熊本市の小学生約百三十人を前にこう切り出した。

 「五十年間、水俣病で苦しみ、環境問題に頑張っている水俣の山の上に今、大きなごみ捨て場が造られようとしています。私たちは反対です。皆さん、どうか水俣を助けてください」。「大きなごみ捨て場」とは、同市長崎に民間企業IWD東亜熊本が建設を計画している産廃最終処分場のことだ。

 産廃関連施設をめぐる住民紛争は今、全国で数百件に上る。自然景観や大気・水源汚染への懸念から反対運動が絶えない。しかし、「どこかに処理施設が必要なのは確かなのに、自分の近くはイヤだという総論賛成、各論反対の理屈ではないのか」という批判もつきまとう。

 ただ、水俣の構図はもっと複雑だ。工場排水に含まれるメチル水銀という産廃で、世界で類例のない公害病に苦しめられた水俣病患者たちが暮らす地でもあるからだ。

 実際、子どもたちへの講演で産廃問題に触れることは、九人の語り部全員が賛同した。杉本さんは「どこかに処分場を造れば解決という話じゃない。ごみを出さない生活や社会を考えることが先決だと分かってほしい。家族と話し合う子どもが一人でも広がれば」と考える。

 同十一月九日。水俣市文化会館で開かれたIWD東亜熊本の事業計画説明会には、反対運動を展開する市民団体メンバーに加え、杉本さんら水俣病患者や支援者らの姿もあった。同社は、ひっ迫する県内の産廃最終処分の状況を示しながら、「豊かで便利な現代生活を続ける上で、廃棄物の問題は避けて通れない」と必要性を訴えた。

 しかし杉本さんらは「今度は山の水俣病を起こすのか」と声を張り上げた。「そもそもチッソがなければ水俣病なんてなかった」と言い切る杉本さん。そこには、水俣病と工場排水との関係を否定し続け被害を拡大させた原因企業の姿を通して、企業活動そのものに対する根本的な不信が横たわっている。

 さらに水俣市の産廃問題が、地域にとどまらず全国的な展開をみせているのも特徴。「公害の原点」と呼ばれる水俣病を抱える特殊な事情からだ。六月、大学教授、作家ら有識者五十三人が環境相や熊本県知事、水俣市長に建設反対を求める声明を発表。十一月には東京で集会も開き、署名活動を通じて反対の輪を広げることも確認した。

 四十年以上、水俣病を告発し続けてきた記録映画作家の土本典昭さん(77)も、産廃問題に注目する一人だ。建設計画を「水俣病被害者に加え、全国に先駆け資源の分別収集に取り組む市民にさらなる負担を強いるもので、人道上問題」と批判する。

 半面、反対運動を展開する市民が「水俣病の歴史」を持ち出す姿に驚いてもいる。「これまで水俣病に口をつぐんでいた一般市民が、この問題で水俣病の歴史に当事者意識を持ち始めている。水俣病を理由に建設に反対することは地域エゴなのか。水俣病の教訓を問い直す機会になるかもしれない」

2006/1/4 水俣病50年 第1部 もう一つの産廃 (3)処分場不足 迫られる排出減 【熊日】

 「県内の管理型最終処分場は計算上、あと二年で満杯になってしまうんですよ」。県庁の廃棄物対策課。県内の産業廃棄物最終処分場で受け入れ可能な残り容量を示しながら窮状を説明する担当者の表情はさえない。

 二〇〇四(平成十六)年度に県内の産廃最終処分場で埋め立てられた廃棄物は約三十五万八千トン。このうち、シートで地下浸透を遮断する管理型処分場への持ち込み分が四割の約十四万トンを占める。これを九州産廃(菊池市)をはじめ三処分場で受け入れた。しかし、昨年十月に八代市の処分場が埋め立て期間を終えたことで、稼働中の施設は二カ所に減少。残る容量は二十六万六千トンしかない。ひっ迫した状況にさらされている。

 環境省産業廃棄物課によると、〇三年度の全国の産廃総排出量は約四億千二百万トンで、主に家庭ごみからなる一般廃棄物と合わせた廃棄物総排出量の約九割に上る。産廃の最終処分量は全体の7・4%に当たる約三千万トン。中間処理などによる減量化で減少傾向にあるものの、あと数年で満杯となる「依然、厳しい状況」(同課)という。最終処分場の受け入れ容量の改善は全国的な課題だ。このため国は、循環型社会形成推進基本法と個別リサイクル法の制定などで3R(発生抑制、再使用、再生利用)の推進に躍起だ。

 市町村が処理責任を負う一般廃棄物と異なり、産廃は民間処理が原則。処分場不足は産業の停滞を招きかねないため、産業界も対策に乗り出している。

 日本経団連は九七年、最終処分場に依存しない産業構造を目指そうと、廃棄物対策に関する自主行動計画を策定。二〇一〇年の最終処分量を九〇年度に比べ75%減らす目標を設定。〇三年度時点で目標を上回る82・6%削減を達成した。また、産廃を生み出す「動脈産業」に対し、軽視されがちだった廃棄物の回収・処理・リサイクル担当の「静脈産業」にも注目が集まっている。

 その取り組みの一端は、水俣市でも始まっている。同市は〇一年、九州では北九州、大牟田両市に続き、国の「エコタウン」の承認を受けた。

 住宅地近くの市中心部にある水俣産業団地(浜町、塩浜町)を核に、産廃の中間処理などを請け負う八社が集積。地元や南九州各地から集めた建設廃材や使用済みタイヤ、油をリサイクルしているのに加え、瓶の再使用などで再資源化し有価物へと変えている。

 ただ、市商工観光課は「エコタウンの究極の目標は、真のゼロエミッション(廃棄物ゼロ)の実現」と意気込むものの、その実現は簡単ではなく道のりは遠い。

 もともと消費者が求める商品を造る過程で産廃が発生する。大量の消費が膨大な産廃につながっているわけだ。

 県廃棄物対策課の福島淳課長は指摘する。「排出事業者や処理業者だけで解決できる問題ではない。産廃の背景には必ず消費がある。ごみを出さない消費行動など、一般廃棄物だけでなく、産廃も自分の生活と無縁ではないことを意識してもらいたい」

2006/1/7 水俣病50年 第1部 もう一つの産廃 (6)税導入 他県と“駆け引き” 【熊日】

乾燥中のコンクリート。建設工事現場などの余りを乾燥、その後リサイクル業者に搬入される=芦北町
 熊本を含む九州七県は二〇〇五(平成十七)年四月一日から法定外目的税である産業廃棄物税を導入した。熊本以外の六県が焼却段階で一トン八百円、最終処分(埋め立て)段階で一トン千円と二段階課税するのに対し、熊本県は最終処分場に持ち込まれた段階のみ一トン千円を課税している。

 熊本県が焼却など中間処理段階で課税しないのは、零細な排出事業者への配慮からという。それでも県内で、産廃を最終処分場に持ち込む中間処理業者や排出事業者の間には負担感が漂う。

 芦北郡芦北町で生コン製造・販売をする藤井産業(藤井公明社長)は以前、コンクリートの産廃の持ち込み料一トン約千円を最終処分場に払っていた。産廃税の導入でこれに千円の負担が加わり、料金が倍になった感覚だ。「相当の重税感」と同社。

 そこで同社は、税のかからないリサイクルに回し最終処分場への持ち込みを減らすことにした。藤井社長(58)は「従来、余った生コンは脱水機にかけ最終処分場へ搬入していた。しかし今は一日乾燥させ、リサイクル業者に搬入する。ひと手間かけても、その方が安上がりだ」。実際、同社の最終処分場への持ち込み量は、〇五年七月を例にとると、生コン販売量がほぼ同じだった前年同月の百十七トンから九十三トンに減った。

 「税導入で、産廃排出抑制に効果が出ている手ごたえはある」と、県廃棄物対策課。十月末までの産廃税納入額は一億円強。一トン千円換算で十万トンの産廃が持ち込まれた計算で、二○○○年の最終処分量年間六十万トンに比べると、半年で十万トンは三分の一に減ったことになる。もっとも県税務課は、六カ月で二億円強の税収を見込んでいた。約半分の徴収額にとどまったことに対しては「産廃の抑制につながったのなら、税額が見込みを下回るのは喜ばしい」。

 九州七県がほぼ足並みをそろえて産廃税を導入した背景には、県境をまたぐ産廃の移動を抑えたいという意図があった。さらに各県は、県外からの産廃の過剰な流入をブロックするあの手この手を模索している。

 福岡を除く各県は、他県の排出事業者が県内に持ち込む際、県との事前協議を求める要綱を設けている。大分県は〇六年四月から事前協議を条例で義務付けるほか、一トン五百円の「環境保全協力金」を上乗せする計画だ。

 熊本県では他県からの持ち込みを各最終処分場の取扱量の三割以下に抑える要綱を設け、一年間で五百トン以上持ち込む業者には事前協議を求めている。逆に五百トン以上を県外に持ちだす際は、県への届け出制としている。

 ただ同課は「県境越えのごみ移動に規制をかけるのは、『産廃は広域で処理する』という廃棄物処理法の精神に反する恐れがあり、慎重でなければならない」とも話す。そこには「マニフェスト(産廃管理表)で見る限り、他県への持ち出しが県内への持ち込みより多いのが実情」という熊本県の微妙な立場がのぞく。

 「ウルトラCのアイデアはない」(同課)とされる産廃対策。九州という広域でみても、各県が“協調”と“駆け引き”を続けている。

2006/1/8 水俣病50年 第1部 もう一つの産廃 (7)法規制「安全を保証しない」 【熊日】

 久留米市が設置する一般廃棄物最終処分場の例を示しながら、未処理水の漏出の危険性を訴える馬奈木昭雄弁護士=久留米市
 産業廃棄物最終処分場を「一切造らせない」と論を張る弁護士集団が九州にある。約三十人でつくる「九州産廃問題研究会」。熊本での水俣病訴訟の先駆けとなった一次訴訟(一九六九〜七三年)から水俣病にかかわった馬奈木昭雄弁護士(62)=福岡県久留米市=が代表だ。

 その馬奈木弁護士は、管理型処分場の遮水シートが破損し廃棄物に触れた水が外に漏れ出す可能性などを指摘した上で、特に「法規制されていない微量の化学物質」の危険性を強調する。

 水俣病では、患者発生が公式に確認された一九五六(昭和三十一)年当時、水俣病の原因物質メチル水銀はもちろん、工場排水自体を規制する法がなかった。法律上はチッソ水俣工場からの排水は水道用水としても使用可能だったとされる。加えて、メチル水銀の影響が早くから指摘されながら、原因物質の確定には公式確認からさらに十三年の歳月を要した。その間、被害は拡大し本格的な補償も置き去りにされた。

 一次訴訟判決は、「被害が予見できなかったため注意義務違反はなかった」と主張したチッソをこう断罪している。  「そのような考え方を押し進めると、環境が汚染破壊され、住民の生命・健康に危害が及んだ段階で初めてその危険性が実証されるわけであり、それまでは危険性のある排水の放流も許容されざるを得ず、その必然的結果として、住民の生命・健康を侵害することもやむを得ないこととされる」

 そんな水俣病の経験が生かされなかった例がある。六八年に発生し、西日本を中心に約一万四千人が被害を申し出た食品公害、カネミ油症事件だ。原因物質とされたのは、危険性が認知されながらメチル水銀と同様、規制されていなかったポリ塩化ビフェニール(PCB)。発生から三十年以上が過ぎた二〇〇一年、その主因が猛毒のダイオキシン類の一種と見解が変更された。

 馬奈木弁護士は指摘する。「その時々の法基準を満たしたとしても、それは安全を保証するものではない。人体に被害が出てからでは手遅れだということを、水俣病やカネミ油症事件が教えたのではなかったか」

 産廃の進出計画に悩む全国三十三の市町村が今、全国産廃問題市町村連絡会をつくっている。事務局の岐阜県御嵩町は、日本三大急流の木曽川沿いに計画された管理型最終処分場の建設をめぐり十年以上、業者と争い、事実上の中断に追い込んだ。柳川喜郎町長(73)は「あらゆる法的手段を検討することで建設は止められる。あきらめや無関心は建設容認と同じことだ」と力説する。

 馬奈木弁護士と柳川町長は、産廃の「最終処分場」という考え方を否定することで見解が一致している。「リサイクルと再使用の徹底が前提。最終的に残る有害物を管理していくことになるが、埋め立てるべきではない。地下浸透のない場所を選んだ上で、将来、無害化技術が確立されるまでの『一時保管場所』と位置付けるべきだ」

2006/1/10 水俣病50年 第1部 もう一つの産廃 (8)分別徹底も減らせぬ総量【熊日】

細かく分別された沼田さん宅の資源ごみ。「正月で家族が戻ってきたから普段の3倍」と話す=水俣市
 水俣病の経験を背景に「環境モデル都市」を目指す水俣市。一九九二(平成四)年の同都市づくり宣言には、水俣病の教訓を学び後世に伝えていくことや被害者の救済、市民の融和を図ることなどと並び、「文明社会のあり方を問い直し、有限な資源のリサイクルを基調とする社会システムづくりを進めていく」とある。

 その取り組みの柱が資源物の分別収集。九三年、県内初の試みとしてスタートした。

 当初の二十品目にペットボトル、廃プラスチックなどが加わり、現在は二十二品目。〇二年からは生ごみのたい肥化も加わった。全国からの視察や児童・生徒の環境学習旅行などが相次ぎ、「公害の街」から「環境都市」としての評価を築きつつある。

 ごみ分別を基礎に資源の再使用、リサイクルへと誘導するその活動は、家庭でごみを減量する行動にもつながった。

 水俣市古城二丁目の主婦沼田悦子さん(59)。環境負荷の少ない消費活動を目指し九七年設立した「市ごみ減量女性連絡会議」(十六団体、約三千人)の発足メンバーの一人だ。

 「例えばレジ袋。便利だからと何気なくもらっている人が多いでしょう。でも年間で考えれば百枚以上使っている計算。買ったものをただ運ぶだけなのに、もったいないでしょ」。そう語る沼田さんらは、買い物用マイバックの普及を早くから呼び掛けてきた。

 「不必要なものはタダでももらわない」という沼田さん。日用品であれ家電品であれ手入れしてなるべく長く使う。不要になったら知人に譲るか、バザーに出す。その結果、「可燃物だけでなく資源物まで、以前よりかなり減った」。今では「物を買うとき、最終的に誰かに譲ることを考えるほど」と、苦にする様子はない。

 それだけではない。環境配慮型の企業を消費者が支える「グリーンコンシューマー運動」を推進。スーパーとの間で食品トレーの廃止を申し合わせたり、環境負荷軽減に取り組む店舗を認定するなど、地域社会に働き掛けている。

 ところが、水俣市のごみ総排出量は減っていない。分別開始翌年度の八千八百三十八トンから増加を続け、一時は分別前と同水準の一万トンを突破した。生ごみのたい肥化を契機に再び減少に転じ、〇四年度は九千二百七十八トン。リサイクル率は上昇をたどるものの、人口減を考えれば、市民一人当たりの排出量はむしろ増加した計算だ。

 現代は「大量生産、大量消費、大量廃棄」に加えて「大量リサイクル」の時代と言われる。大量の廃棄物をリサイクルするためにも、膨大なエネルギーを費やしている。その結果生まれる大量のリサイクル残さなどは、現状では埋め立てる最終処分場がなければ完結できない。他の自治体をリードする水俣市ですら、大きく見れば水俣病発生の遠因となった経済優先の社会システムに組み込まれたままなのも事実だ。

 「市民の地道な運動は大事。ただそれにも限界がある。いまだに消費を重んじる社会、特に産業から変わってもらわないと…」。沼田さんはもどかしさを覚える。

2006/1/11 水俣病50年 第1部 もう一つの産廃 (9)問われる生活の在り方【熊日】

田中商店水俣営業所の洗瓶工程。洗い終わった瓶は傷や汚れを一本ずつチェックされ、再び使用される=水俣市
 水俣市で民間が計画する産業廃棄物最終処分場の建設をめぐっては、市内外で議論が交わされる。江口隆一市長は「処分場を造ってほしいと思う首長はいない」と発言する一方で、設置許可権限が知事にあることなどから「中立」の立場を貫いている。

 ただ、同市の「環境モデル都市づくり宣言」との関係では「宣言は他の自治体の手本となる環境施策を展開するという趣旨。市内の産廃を市外に持ち出しながら市内には持ち込ませない、では手本と言えない」と悩ましさも口にする。

 産廃問題を機に、水俣市の果たす役割に期待を寄せる声がある。瓶のリユース(再使用)を手掛ける田中商店水俣営業所=同市浜松町=の田中利和専務(52)もその一人だ。

 「産廃の最終処分という『出口』の議論だけでは、処分場の必要性を否定できない。大切なのは『入り口』だ。ごみを出さない生活を追求したり、リサイクルできない素材を洗い出して国や企業に改善を申し入れるなど、『入り口』の議論を水俣から起こしてほしい」

 同社は瓶全体の九割を占める使い捨ての「ワンウエー瓶」を、一升瓶やビール瓶と同様に繰り返し使えるようにしようと、二〇〇一(平成十三)年十一月、洗瓶工場の操業を始めた。いまや水俣エコタウン事業の看板企業だ。

 水俣市で細かく分別収集された瓶も同社を通じてリユースされる。〇四年四月からは、焼酎用の五合瓶(九百ミリリットル)のリユースを推進するため、従来より強度の高い瓶を開発。廃棄物の発生抑制に積極的に取り組む。ただ、同社からも廃棄物は出る。ラベルかすとキャップ程度だが、いずれも複合素材のため分別が難しいという。

 同市が進める二十二品目もの資源ごみ分別収集も、排出量の削減にはつながっていない。田中専務は自らの経験から「分別したごみが、どのようにリサイクルされ、その過程で何が残渣(ざんさ)になり最終処分されているのか、検証されていない。分別だけに目を奪われ、中途半端で止まっている」と、課題を指摘する。

 熊本学園大は水俣病を総合的にとらえる水俣学の研究・交流拠点として昨年、水俣学現地研究センターを設置した。同センター長の宮北隆志教授(53)は語る。

 「水俣病で私たちは環境を軽視することが命を危うくすることを学んだはず。膨大なエネルギーを使ってリサイクルを続けることが環境を守る生活なのか。五年後、十年後の市の姿や市民のライフスタイルを話し合ったうえで、処分場の必要性を考えるべきだ」


◇            ◇

 水俣病の原因物質メチル水銀は、現代生活に欠かせないプラスチック製品などの原料を製造する過程で発生した産業廃棄物だった。処分場問題が過熱する現在の産廃もまた、その背後には快適さや利便性を追い求める生活様式がある。その意味では相似形だが、水俣病の原因が一民間企業の排水だったのに対し、今日の産廃の発生源は私たちの暮らしと密接につながる。半世紀を経た二つ目の産廃問題が問いかけているものは、一人ひとりの生活の在り方かもしれない。=第1部終わり

 ※第1部は並松昭光、久間孝志、東寛明が担当しました。

2006/1/12 社説【国分産廃白紙】計画を進めるには対話が欠かせない【南日本】

鹿児島県が目指す公共関与の産業廃棄物管理型処分場の候補地として選定作業が進んでいた霧島市(旧国分市)川内地区について、新しく就任した前田終止市長が白紙撤回の方針を市議会で表明した。

 前田市長は昨年11月の合併に伴う市長選で、「住民の合意が得られない施設には反対する」と主張して、建設を推進する旧国分市長を破り当選した。こうした経緯からすると白紙撤回の表明は当然予想されていた。

 公共関与の候補地選定は旧喜入町、旧鹿屋市、旧国分市上之段に続いて、川内地区も暗礁に乗り上げてしまい、県は4たび仕切り直しを迫られることになる。

 地域住民の抵抗がつきものの管理型処分場の建設は、住民の十分な理解と同意を得ることが大前提になる。それにはすべての情報を開示し、時間をかけて説明し、徹底的に話し合う必要がある。

 今回のケースがその手順をきちんと踏んで、住民本位で進められてきたのかというと疑問が残る。住民は一方的に押しつけられたという不信感を強くして、反対運動に立ち上がったのではないか。

 誘致の名乗りを上げた旧国分市は、候補地を絞り込む過程では確かに民意をくみとる形を取っている。市民の代表で構成する適地選考委員会が1年以上も時間をかけ、41カ所の候補地を5カ所にまで絞り込んだやり方は評価できる。

 問題は、そこから先の流れである。当時の市長に最終判断が委ねられ、川内地区が有力候補地に決まったのだが、その経過と理由が地元住民に明確に示されたとは言い難く、説得力を欠いたと言わざるを得ない。なにより決定的なのは住民との対話不足だ。白紙撤回は、対話を欠いたことによる当然の帰結だろう。

 過去の3例も、住民との話し合いが置き去りにされたまま、計画が推し進められようとして強い反対にあい、とん挫した経緯がある。同じ轍(てつ)を踏んでばかりいては産廃処分場選定は前に進まない。

 管理型処分場は県内に1カ所もなく、年間10万トンを超す産廃は隣接県の民間処分場に頼っているのが現状だ。県内で完全処理するために公共関与の処分場の建設を急ぎたい県の方針に異論はない。経済効果にかける地元商工関係者の期待にも耳を傾けることも大事である。

 県も市も、これまで重ねてきた議論や先進地視察などの成果を生かして、新たな道を模索しなければならないが、どんなときも安全性の確保を願う住民の声を最優先するよう肝に銘ずるべきだ。

2006/1/25 歴史配慮し産廃計画阻止を 水俣市民、環境相に要望【共同通信】

 熊本県水俣市の山間部で産業廃棄物最終処分場の建設計画が持ち上がっており、「水俣の命と水を守る市民の会」(坂本ミサ子代表)など3市民団体が「50年を経ても水俣病に苦しむ人がいる町での大規模な産廃処分場建設を許さないでほしい」とする小池百合子環境相あての要望書を25日、環境省に提出した。

設置許可の権限は熊本県にあるが「環境省はこの町の歴史に照らし、阻止に向けて動いてほしい」と求めた。提出後に記者会見した坂本代表は「また汚れた水や空気に脅かされるのかと思うと、不安でたまらない。水俣は忘れ去られたのではないかと思う」と訴えた。(共同通信) 共同通信 2006年 1月25日 (水)

2006/1/26 熊本・水俣の産廃処分場問題:市民団体、環境省に反対の要望書提出【毎日】

 熊本県水俣市内に計画されている産業廃棄物最終処分場の建設に反対する市民団体が25日、環境省を訪れ、計画の白紙撤回に向けて国が県や市を適切に指導するよう求めた小池百合子環境相あての要望書を提出した。市民団体は「処分場建設は水俣病で苦しんだ地域の犠牲を冒とくする。人道的にも道義的にも許されない」と訴えている。要望書を出したのは、水俣の命と水を守る市民の会(坂本ミサ子代表)ら3団体。

2006/1/26 選挙:水俣市長選 産廃処分場問題など、立候補表明2氏が論戦−−公開討論会 /熊本【毎日】

 ◇江口氏「反対」を明言/宮本氏「住民投票も」

 任期満了に伴う水俣市長選(29日告示、2月5日投開票)の立候補予定者を集めた「水俣未来づくり公開討論会2006」が24日夜、同市牧ノ内の市文化会館であり、有権者約1100人が詰めかけた。水俣青年会議所メンバーで作る実行委(前田茂樹委員長)の企画。

 討論会に参加したのは、立候補を表明している現市長の江口隆一氏(40)と前市教育長の宮本勝彬氏(62)=立候補表明順、いずれも無所属。事前提出したローカルマニフェスト(地方版政権公約)に基づき、「市政の現状認識と目指すべき姿」や「行財政改革の具体策」などについて意見を戦わせた。

 選挙戦の最大の焦点である産業廃棄物最終処分場については、これまで「中立」の立場を取ってきた江口氏が初めて「反対」を明言。討論会後、江口氏は「議会答弁などで反対の姿勢を示してきたと思うが、業者と交渉するため中立と言った。今回、その戦術を明らかにしたに過ぎず、姿勢は今後も変わらない」と説明した。

 一方、宮本氏は「私のすべてをかけて阻止する。市役所に特別対策チームをつくり、市民とともに取り組む。専門家に独自調査を依頼し、住民投票も考えている」と訴えた。

 当選後すぐに行う三つの重要施策として、江口氏は、企業誘致による雇用創出▽予防医学を活用した「ピン・ピン・ポク運動」の推進▽CM撮影誘致などフィルムコミッション事業を、宮本氏は、産廃問題対策▽支援教員制度導入など教育問題▽自治会活動支援など地域活性化を、それぞれ掲げた。【平野美紀】

2006/1/26 選挙:水俣市長選 産廃処分場問題など、立候補表明2氏が論戦−−公開討論会 /熊本【熊日】

 ◇江口氏「反対」を明言/宮本氏「住民投票も」

 任期満了に伴う水俣市長選(29日告示、2月5日投開票)の立候補予定者を集めた「水俣未来づくり公開討論会2006」が24日夜、同市牧ノ内の市文化会館であり、有権者約1100人が詰めかけた。水俣青年会議所メンバーで作る実行委(前田茂樹委員長)の企画。

 討論会に参加したのは、立候補を表明している現市長の江口隆一氏(40)と前市教育長の宮本勝彬氏(62)=立候補表明順、いずれも無所属。事前提出したローカルマニフェスト(地方版政権公約)に基づき、「市政の現状認識と目指すべき姿」や「行財政改革の具体策」などについて意見を戦わせた。

 選挙戦の最大の焦点である産業廃棄物最終処分場については、これまで「中立」の立場を取ってきた江口氏が初めて「反対」を明言。討論会後、江口氏は「議会答弁などで反対の姿勢を示してきたと思うが、業者と交渉するため中立と言った。今回、その戦術を明らかにしたに過ぎず、姿勢は今後も変わらない」と説明した。

 一方、宮本氏は「私のすべてをかけて阻止する。市役所に特別対策チームをつくり、市民とともに取り組む。専門家に独自調査を依頼し、住民投票も考えている」と訴えた。

 当選後すぐに行う三つの重要施策として、江口氏は、企業誘致による雇用創出▽予防医学を活用した「ピン・ピン・ポク運動」の推進▽CM撮影誘致などフィルムコミッション事業を、宮本氏は、産廃問題対策▽支援教員制度導入など教育問題▽自治会活動支援など地域活性化を、それぞれ掲げた。【平野美紀】

2006/1/26 水俣市長選公開討論会 産廃処分場建設計画に現職も「反対」表明=熊本【読売】

 29日告示、2月5日投開票の水俣市長選の立候補予定者による公開討論会が24日夜、市文化会館で行われた。再選を目指す現職・江口隆一氏(40)と前市教育長の新人・宮本勝彬氏(62)(立候補表明順)がローカル・マニフェスト(地方版政権公約)に基づき施策などを説明した。
 争点の一つとされる民間業者による産廃最終処分場の建設計画の対応について、「中立」の立場を貫いてきた江口氏が公の場で初めて「反対」と発言。理由について「中立は(企業に対する)戦法。法的に止めるには科学的な根拠が必要で、反対と言うと企業が耳を貸さなくなる。中立という言い方で交渉権、パイプを残したかった」と述べた。
 宮本氏は「私のすべてをかけて阻止する。市の対応を世界が注目している」としたうえで、「市役所内に特別チームをつくり、専門家の協力を仰ぎながら科学的な調査を基に国や県に訴える。住民投票も考えている」と訴えた。
 江口氏は討論会後の取材に対し、「選挙前で市民に誤解を受けたくないので戦術を明らかにした」と説明。宮本氏は「これまで中立を貫き、討論会で反対と言われたのは理解に苦しむ」と述べた。
 このほか、江口氏は「公害の教訓を生かし、50年間の環境の取り組みを発信し、自信と誇りを持って暮らせる街をつくりたい」と強調。宮本氏は「日本一の読書のまちづくりを進め、子どもの命を守るための人員を学校に配置したい」などと教育環境の整備を掲げた。
 討論会は、水俣青年会議所の有志でつくる実行委員会が主催。会場には約1100人が集まり、立ち見も出るなど関心の高さを示した。  
 
 写真=公開討論会で公約を訴える立候補予定者

2006/1/27 小池環境相:知事の判断を尊重 熊本の産廃処理場問題で 小池環境相:知事の判断を尊重 熊本の産廃処理場問題で

 熊本県水俣市内に計画されている産業廃棄物最終処分場の建設問題で、反対する地元の市民団体が国に熊本県や同市への適切な指導を求めたことに対し、小池百合子環境相は27日の閣議後会見で、「ごみ処理は地域が進め、処理をする仕分けになっている。(処分場建設は)県知事の設置許可によるもので、最終的には知事の判断を尊重する」と述べた。

 小池環境相は「関係住民の意見も聴きながら、環境影響評価と廃棄物処理法の必要な手続きによって生活環境の保全をしながら、(県知事が)適切な対応をされることを望んでいる」と話した。【江口一】

2006/1/27 水俣市長選を前に:課題を探る/上 ひっ迫する市財政 /熊本 【毎日】

 ◇商店街は集客力低下

 任期満了に伴う水俣市長選は、現職の江口隆一氏(40)と前市教育長の宮本勝彬氏(62)が立候補の準備をすすめ、中盤の選挙戦も熱を帯びてきた。29日の告示を前に、水俣市の現状と課題を探る。【平野美紀】

 ◇硬直化と高齢化

 「もう削る所がない」

 06年度予算を査定中の市幹部が嘆く。昨年までは各課各部一律に5%、10%と削減してきたが、今年は部課の垣根を取り払って細かく優先度を比較している。「県庁出張時には、時間がかかるが高速代が200円安い御船インターで下りろ」と職員に徹底するほどの状況だ。

 05年度の市当初予算は約126億円。04年度決算でみると、歳入155億円のうち地方税が17%、地方交付税は34%、国庫支出金17%。歳出は、人件費などの義務的経費48%、投資的経費は20%で、財政の弾力性を示す経常収支比率は97・3%と硬直化が甚だしい。

 頼みの綱の地方交付税も三位一体の改革で減額の一途。00年度64億円がその後61億→58億→57億→53億と推移。05年度は40億円台に落ち込む見込み。中央とのパイプで、予算がもらえる時代ではもはやない。

 昨年3月末、市の人口は63年ぶりに3万人を割った。毎年2000人ずつ減少しており、歯止めがかからない。合併特例債もない、税収増は期待薄、高齢化率(29%)の上昇と、暗雲が立ちこめる。「だれが新市長になっても、相当厳しい財政運営を強いられる」と森近・総務企画部長は話す。

 ◇続々、郊外型大型店

 この数年、鹿児島県出水市(車で約25分)と八代市(同70分)に郊外型大型店が続々と誕生し、水俣市の商店主たちは集客力の低下に悩まされている。

 市中心部の七つの商店会でつくる市商店会連合会(約180店舗加盟)の売り上げは年間約30億円。30年前は約250店舗で100億円近かったという。「出水、八代との都市間競争にも負けている」と同会の平田智士会長(64)は厳しい現実を直視する。

 地元商店街の活性化策として、水俣商工会議所は03〜05年に3回、総額1200万円の共通商品券(額面総額1275万円)を発行したが、その多くは市内の核店舗に吸い込まれた。「商店街に生鮮食料品を扱う店が少ないのが原因」と同商議所の寺田安郎専務理事(60)は分析する。

 品ぞろえに対抗するにはアイデアと、連合会は昨年「全国初の企画」として商店街の駐車場を使ったグラウンドゴルフ大会を開いた。「イベントで消費者を引きつけ、個店の努力で買ってもらう。きめ細かなサービスで、オンリーワンを目指さなければ生き残れない」と平田会長。古切手集めや使用済みハシの回収など、環境面からも地域のつながりを深めようと模索している。

2006年1月20日 芦北町国有林 ヒノキ立ち枯れ被害拡大 九州森林管理局が調査 【熊日】

葉が枯れ落ち枝だけになったヒノキ=11日、芦北町古石の国有林

 ヒノキの異常変色が見つかっていた芦北郡芦北町の国有林で、それらの木々が次々と立ち枯れしていることが十九日までに分かった。管轄する九州森林管理局(熊本市京町)も立ち枯れを確認しており、調査を進めている。

 被害が出ているのは、同町古石の国有林。同局が今月十一日に現地調査したところ、〇・二ヘクタールの範囲でヒノキ六百九十一本とスギ四本が枯れていた。これらは一九七四(昭和四十九)年に植えられていた。

 同局は昨年八月にも現地を調べており、同じ範囲でヒノキ百七十九本の立ち枯れを見つけていた。今回の調査で立ち枯れ被害がさらに進んでいることが確認された。

 同局は九月、独立行政法人森林総合研究所九州支所(熊本市黒髪)に原因調査を委託した。同研究所は(1)病害、虫害(2)ヒノキ自体の生態(3)土壌の三点を調べ、同局に結果を報告した。同局はまだ報告内容を明らかにしておらず、近く芦北町や地元住民に伝える方針。

 古石地区では、昨年八月、地元住民が褐色に葉が変色したヒノキを見つけ、原因を突き止めるパトロール隊を結成し、定期監視を続けている。

 立ち枯れがあった林の隣接地では、県南の民間会社が国有林を賃借。県の産廃処分業許可を受け、二〇〇一(平成十三)年からは、木くずと生ごみやし尿などを混ぜ、たい肥化する産廃中間処理施設を操業している。住民らは、この施設との関係を含め同局に調査と説明を求めている。

 同局は「研究所の報告を受け、内部で対応を検討している。住民や町には今月中に結果を報告したい」と説明。県廃棄物対策課は「管理局の対応を見守りたい」としている。

 民間会社は「施設は県の基準をクリアしている。県から指導があれば改善すべきところは改めるが、今のところ立ち枯れとの因果関係があるとの話は聞いていない」と話している。

 住民らは「立ち枯れしている国有林の近くには民有林があり、被害の広がりを心配している。早く原因を突き止めてほしい」と話している。

2006/1/27 国有林立ち枯れ問題 被害林の土壌に強い酸性値 芦北町【熊日】

 芦北郡芦北町古石の国有林でヒノキなど約七百本が立ち枯れした問題で、被害林の表土が通常より強い酸性値を示すなど土壌に変化が出ていることが二十六日分かった。一部の土壌だけ酸性度が自然に変化する事例は少ないため、原因物質は外部からもたらされた可能性が高いとみられる。管轄する九州森林管理局(熊本市京町)は二十七日、調査結果を芦北町などに報告する。

 関係者などによると、通常、ヒノキ林の酸性度指数(pH)は4〜5程度であるのに比べ、被害が集中している場所の指数は、より酸性度が強い3・5前後だった。

 また、電気の流れやすさを示す電気伝導度指数(EC)も通常の数倍から十数倍に達していた。多量のイオンが含まれるとみられ、土壌の変化を示した。酸性度や電気伝導度は林地や農地の土質を調べる指標という。

 九州森林管理局は、独立行政法人森林総合研究所九州支所(熊本市黒髪)に立ち枯れの調査を依頼、今月十九日に報告を受けた。土壌も調査対象になっており、同局は酸性化や電気伝導度の上昇を把握している。調査項目の一つである病害虫による被害の可能性は低いとしている。

 立ち枯れは〇・二ヘクタールで発生。同局の調べで、被害は昨年八月の時点でヒノキ百七十九本だったが、今月十一日にはヒノキ六百九十一本とスギ四本に拡大していた。

 古石地区では昨年八月、地元住民が葉が褐色に変化したヒノキを発見。原因を突き止めるパトロール隊をつくり、定期監視を続けている。また、同局に原因を究明するよう求めている。

2006/1/27 産廃処分場計画 「最終的には知事判断」と環境相【熊日】

 小池百合子環境相は二十七日の閣議後会見で、水俣市で建設計画が進む民間の産業廃棄物最終処分場について、「県知事の設置許可によるものだから、最終的には知事の判断だ」と述べ、直接は関与しない姿勢を示した。これに対し潮谷義子知事は「環境省が関係ないというのはおかしい」と不満を口にした。

 小池環境相は同市の市民団体が計画撤回に向けて環境省が動くよう求めたことに対し、「知事が適正な判断をされると思う」と強調した。同市はチッソが排出した産廃であるメチル水銀によって水俣病被害を受けた特殊事情を持つが、「水俣市でなくても同じことで、地元の判断を尊重する」と繰り返し、考慮する考えがないことを示した。

 民間業者から県に廃棄物処理法に伴う処分場の設置許可申請が出た場合は、「住民の意見を聞き、環境影響評価と廃棄物処理法の手続きによって、生活環境保全をしながら適正に対応することを望む」と述べた。

 一方、環境省から“げた”を預けられた形の潮谷知事は同日の月例会見で、「まだ環境アセスの準備段階であり、市長や専門家、住民の声をしっかりくみ上げて判断していきたい」と言葉を選んだ。

 ただ、知事は会見終了後、処分場の設置許可は国の法定受託事務であることから、「県は、本来国が果たすべき役割を代行しているにすぎず、環境省が関係ないというのはおかしい」と環境相の発言に疑問を挟んだ。(亀井宏二、毛利聖一)

2006/1/28 水俣市長選を前に:課題を探る/下 環境モデル都市の行方は? /熊本 【毎日】

 ◇観光資源掘り起こしも急務

 ◇山と海の連携

 「せっかく二つの温泉街があるのだから、連動して観光客を呼び込みたい」

 04年4〜12月、観光物産協会エコみなまた(福田興次会長)が、九州新幹線(新八代−鹿児島中央)の開業(同年3月)を機に連泊プラン「つばめ旅情」を売り出した。

 山の「湯の鶴温泉」(旅館4軒)と、海の「湯の児温泉」(同9軒)は車で20分。それぞれ1泊すれば、通常料金から1泊1000円値引き、9カ月間で1131人が利用した。03年の市の観光入り込み客は、宿泊13万1042人、日帰り33万5264人。それが開業後の04年では、宿泊が約2万人減ったのに対し、日帰りが2万人増。合計約2000人の微増は、関係者の予想より低かった。

 同協会の竹本明美さん(48)は「新幹線開業で遠方から来やすくなったが、逆に帰りやすくもなった」と話す。04年に両温泉を訪れた客は、95年に比べると約半分と激減。湯の児で旅館を営む松永康生(やすなり)・同協会副会長(57)は「時間的余裕のある旅行者が減った。山と海の連携だけではなく、市内全体の観光資源を掘り起こし、集客を図りたい」。点から面への展開を探っている。

 ◇産廃処分場計画

 「水俣病50年の歴史を踏みにじる行為じゃないか」

 昨年11月9日夜、水俣市文化会館。IWD東亜熊本(小林景子社長)が同市長崎の山林に計画する産業廃棄物最終処分場の住民への事業計画説明会で、建設反対住民が小林社長らをなじった。

 建設計画を市民が知ったのは04年3月。ほどなく反対運動が起こり、約2万人の反対署名が県知事に提出された。市議会も全会一致で建設反対の意見書を採択。安定型と管理型処分場を建設する計画だった同社は昨年6月、安定型を断念。現在の計画は約95ヘクタールの敷地に埋め立て面積9・5ヘクタールの管理型処分場を造り、金属くず、汚泥、一般廃棄物などを15年埋め立てる。

 水銀という産廃が海に流され発生した水俣病。その教訓として市は92年、環境モデル都市づくりを宣言。93年から官民一体となり、ゴミの20分別(現在22分別)を始めた。環境マイスター制度など、さまざまな先進的取り組みで「環境の水俣」として全国に知られている。

 その町に降ってわいた産廃問題。市は04年10月1日発行の市報で「市が(建設計画に)反対の意思表示をして阻止できるなら反対するが、市には何の阻止する権限がない」と、許認可権が県にあることを強調。同年11月、05年10月には市報特報版でも経緯などを掲載した。

 市は05年3月、第4次総合計画(05〜09年)の基本構想で、将来の都市像を「エコポリスみなまた〜人・環境・経済がもやい輝くまち〜」と策定した。3万市民の命と財産を託された新市長は「環境の水俣」をどう導くのか。【平野美紀】

2006/1/28 国有林立ち枯れ問題 「原因特定できない」 森林管理局が報告【熊日】

 芦北郡芦北町古石の国有林でヒノキなど約七百本が立ち枯れした問題で、九州森林管理局は二十七日、被害林の土壌調査の結果などを周辺住民に報告した。土壌の酸性化を確認し、大気中の物質の影響が考えられるとしながらも「原因物質の特定は技術的にできない」としたため、住民からは早急な原因究明を求める声が上がった。

 古石交流館みどりの里で、同局熊本南部森林管理署(人吉市)の小島善雄署長ら二人が、住民ら二十二人に報告。同局が調査を委託した独立行政法人森林総合研究所九州支所(熊本市黒髪)の調査結果を基に、「酸性化し、塩類濃度が高い土壌が確認された。外部から何らかの物質が入った可能性が高い」「目に見える葉の障害には大気中の物質の影響が考えられる」と説明した。病害虫被害の可能性は低いとした。

 しかし原因の特定に関しては「立ち枯れと土壌酸性化の結びつきは分からない」「大気中の物質の特定は、森林総合研究所では技術的に難しい」と述べるにとどまった。

 また、隣接する民間の産廃中間処理施設と立ち枯れの関係についても「分からない」と語り、産廃処分業の許可権限を持つ県に大気調査を依頼したことを明らかにした。

 これに対し住民からは「七百本もの木々が枯れていることへの危機感が足りない。国が独自に大気の調査をできないのか。とにかく原因特定を急いでほしい」「病害虫よりも産廃処理施設との関連を優先的に調査すべきではなかったのか」と、調査の不備を指摘する声が上がった。

 小島署長らは住民説明を前に県芦北地域振興局と芦北町役場を訪れ、調査結果を報告した。(東寛明)

2006/1/28 ヒノキ立ち枯れ被害調査 芦北で695本「低pH、高EC」=熊本【読売】

 ◆水俣、77本「伐採で環境変化」
 九州森林管理局熊本南部森林管理署(人吉市)は27日、芦北町古石と水俣市袋の国有林の一部で、立ち枯れ被害が出ているヒノキの人工林の調査結果を発表した。
 同管理署によると、立ち枯れが確認されたのは、古石の国有林約542ヘクタールのうち約0・22ヘクタールで、被害を受けたのは樹齢32、33年の695本。袋では約138ヘクタールのうち約0・05ヘクタールで、樹齢49年の77本。
 古石の人工林は虫害、病害はなかったが、土壌の酸性度指数(pH)が3・3〜4・1で通常の人工林の4〜5より酸性度が強かった。土壌に溶け込むイオン量を示す電気伝導度(EC)も通常の10〜30に比べ80・7〜390と高い数値を示した。
 同管理署は、この数値について「低pH、高ECが養分吸収を阻害することはあるが、立ち枯れを引き起こすかは事例がなく不明」と説明。低pH、高ECの原因に関しては「何らかの物質が土壌に流入した可能性が高い」としている。
 袋については、立ち枯れ発生場所付近の人工林の一部が伐採されたため、直射日光で土壌が乾燥するなど環境が変化し、ストレスに弱いヒノキが影響を受けた可能性が高いという。
 同管理署は昨年8月、被害を確認。同9月から、独立行政法人森林総合研究所九州支所(熊本市)と合同で調査を行っていた。

2006/1/29 水俣市長選告示 現職と新人2氏が届け出【熊日】

 任期満了に伴う水俣市長選挙と同市議会議員の死去に伴う議員補欠選挙(被選挙数一)が二十九日、告示された。市長選には、現職で再選を目指す江口隆一氏(40)=自民、公明推薦=と、新人で元市教育長の宮本勝彬氏(62)、新人で元会社員の斉藤英雄氏(66)の三人(いずれも無所属、届け出順)が立候補を届け出、二月五日の投票日に向け一週間の選挙戦に入った。

 江口候補は中央公園の浜グラウンドで「この四年間で市役所や医療センター、各種団体のぜい肉をそぎ落としてきた。それらに神経と血が通うのはこれから。県議時代から水俣発展のために人生をかけてきたが、この思いを今回で終わらせないでほしい」と第一声。

 宮本候補は牧ノ内の市文化会館前広場で「産廃処分場は必ず止める。市役所から反対する。現地がいかに危険な場所かを調べ、国、県に訴える。子どもたちに美しく豊かな環境を残さなければならないが、産廃を止めてはじめて経済、福祉、観光も潤う」と訴えた。

 斉藤候補は「市長当選が目的ではない」とした上で「九州新幹線の仮トンネル直下に活断層があり、地震で市民に危険が及ぶ恐れがあることを訴えたい」と主張。選挙運動はせず公報などで自説を展開するとしている。

 期日前投票は三十日から二月四日までの午前八時半〜午後八時、市役所共済会館四階で。

 投票は五日午前七時から午後八時まで(久木野地区は午後七時まで)市内二十二カ所であり、同九時から市立総合体育館で即日開票される。当落判明は市長選が午後十一時二十分ごろ、市議補選は同十一時四十分ごろの見込み。

 二十八日現在の有権者数は二万四千二百七十人(男一万九百八十八人、女一万三千二百八十二人)。

2006/1/30 選挙:水俣市長選/水俣市議補選 市長選、3氏が立候補−−告示 /熊本【毎日】

◇産廃処分場など巡り舌戦スタート
 任期満了に伴う水俣市長選と市議補選(改選数1)が29日、告示された。市長選には、再選を目指す現職、江口隆一氏(40)=無所属、自民、公明推薦▽新人で前市教育長、宮本勝彬氏(62)=無所属▽新人で元会社員、斉藤英雄氏(66)=同=の3人が立候補。産廃処分場建設問題や地域活性化などを焦点に舌戦がスタートした。【平野美紀】

 ◇市議補選に2氏

 江口氏は行財政改革などの実績を強調。「環境と経済の両立」を掲げ、農協をはじめ各種団体の推薦を受けて組織戦を展開。宮本氏は政党推薦を受けず、処分場に反対する市民や教え子を運動の核に「産廃を阻止し、住民と協働する」と幅広い支持を呼びかける。斉藤氏は「(新幹線工事などを巡る)災害の危険性を市民に知らせたい」と話している。

 また市議補選には、県議秘書の高岡利治氏(47)▽農業の千々岩巧氏(57)=いずれも無所属=が立候補した。

 投票は2月5日午前7時〜午後8時(一部繰り上げ)、市内22カ所であり、同9時から市総合体育館で開票される。1月28日現在の有権者数は2万4270人(男1万988人、女1万3282人)。

 ◇「命ささげる覚悟」−−江口候補

 江口候補は午前9時、中央公園の浜グラウンドで出陣式。自民党国会議員や県議、市議らが駆けつけた。産廃については「許認可権は県知事(にあり市長ではない)」と強調。市職員削減や市立総合医療センターの立て直しなど実績を示し「4年間で市のぜい肉をそぎ落とし、神経や血管が通い始めた。今後も水俣のために命をささげる覚悟」と声を上げた。【新里啓一】

 ◇「必ず処分場阻止」−−宮本候補

 宮本候補は午前9時、牧ノ内の市文化会館前で出陣式。産廃処分場建設に反対する市民団体「水俣の命と水を守る市民の会」ののぼり旗約30本が並ぶ中、「美しい環境モデル都市を目指す中で経済や観光も潤ってくる。市役所から声を上げ、処分場計画を必ず阻止し、豊かな水俣を子供たちに残したい。精いっぱい、正々堂々と人生をかけてがんばる」と力を込めた。【阿部周一】

 ◇「災害の危険性」訴え−−斉藤候補

 斉藤候補は午前10時40分ごろ届け出。出陣式は行わず、選挙公報を除き、選挙活動もしないという。届け出後、報道陣の前で「新幹線のトンネル工事に関連して、災害の危険性をはらんだ場所がある。その危険性を市民に喚起しようと立候補した」と動機を語った。産廃問題については「予定地周辺には活断層が走っており、建設には反対」と話した。【平野美紀】

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 ◆市長選立候補者(届け出順)

江口隆一(えぐち・りゅういち)40 無現(1)

 市長▽生コン製造販売会社役員▽市体協会長[歴]衆院秘書▽県議会厚生委員長▽九州東海大=[自][公]

宮本勝彬(みやもと・かつあき)62 無新 

 [元]市教育長[歴]水俣第二小・水俣第三中校長▽阿蘇教育事務所長▽水俣第一中校長▽東洋大

斉藤英雄(さいとう・ひでお)66 無新 

 [元]鉄鋼会社員[歴]木材会社員▽出水商高      

 ◆市議補選立候補者(改選数1−2届け出順)

高岡利治 47 無新 県議秘書[歴]高校教諭▽ホテル勤務

千々岩巧 57 無元(3)農業[歴]農協職員・理事▽市議3期

2006/1/30 水俣市長選告示 現新3氏が立候補 産廃場問題どう影響=熊本【読売】

 水俣市長選と市議補選(被選挙数1)が29日、告示された。市長選には、再選を目指す現職・江口隆一(40)(無所属=自民・公明推薦)、前市教育長の新人・宮本勝彬(62)(無所属)、元会社員の新人・斉藤英雄(66)(同)の3氏が立候補したが、現市政の継続を訴える江口候補と、刷新の必要性を主張する宮本候補の事実上の一騎打ち。
 市長選には、民間業者が同市内に計画している産廃最終処分場建設問題への対応が微妙な影響を与えそうで、江口、宮本両候補とも第一声でこの問題を取り上げた。
 ◆命ささげる覚悟/現・江口候補
 江口候補は同市中央公園の浜公園運動場で出陣式。県選出の国会議員や県議らの激励を受けた後、「産廃問題は県知事が許認可権を持っており、私が代われば止まるというのはうそだ。本当に市民のことを考える人たちと、産廃問題などを利用し政権を乗っ取ろうと利害関係ばかり考えている方々との戦い。水俣のために人生、命をささげる覚悟。この思いを終わらせないでほしい」と力を込めた。
 ◆美しい環境残す/新・宮本候補
 宮本候補は、同市牧ノ内の市文化会館前広場で第一声。「(産廃)最終処分場の建設は何としても止める。専門家に頼んで調査し、(予定地が)どれだけ危険な場所なのかを国や県に訴えたい。市長が先頭に立ち、市民と一緒にやっていけば人の心は動くはず。子どもたちに美しい環境を残し、ここに生まれ、生きて良かったと語れるような水俣を作らねばならない」と声を張り上げた。
 ◆公報で主張訴え/新・斉藤候補
 斉藤候補は「街頭での選挙運動はせず、公報で主張を訴える」という。
 
 ◆市議補選は新元一騎打ち
 市議補選は、新人と元職の各1人が名乗りを上げた。
 投票は市長選、市議補選とも2月5日午前7時から午後8時(一部は午後7時)まで市内22か所で行われ、同9時から市総合体育館で開票される。
 有権者数は28日現在、2万4270人。
 
 ◆水俣市長選立候補者(届け出順) 
 ◇江口隆一(えぐち・りゅういち) 40 無所属 現
 (推)自・公。水俣芦北広域行政事務組合代表理事、水俣市社会福祉協議会長。元県議・衆院議員秘書。九州東海大工学部卒。同市出身。同市浦上町。当選1回。
 ◇宮本勝彬(みやもと・かつあき) 62 無所属 新
 前水俣市教育長。元同市立水俣第一中校長・阿蘇教育事務所長・芦北教育事務所指導課長・同市立袋中教頭。東洋大文学部卒。熊本市出身。水俣市長野町。
 ◇斉藤英雄(さいとう・ひでお) 66 無所属 新
 元製鉄会社員・木材会社員。鹿児島県出水市立出水商高卒。水俣市出身。広島県福山市幕山台7。
 
 ◆市議補選立候補者 被選挙数1―候2(届け出順) 
 ◇高岡利治 47 無 新    〈1〉県議秘書、市水泳協会理事〈2〉高校教諭〈3〉日体大体育
 ◇千々岩巧 57 無 元 《3》〈1〉農業、中同窓会長〈2〉農協理事〈3〉鹿児島県伊佐農林高
 【注】《 》数字は当選回数。年齢は投票日現在。〈1〉現職〈2〉職・政治歴〈3〉最終学歴

2006/1/31 水俣市長選 主な候補の横顔 江口隆一さん、宮本勝彬さん=熊本 西部朝刊 二熊本【読売】

 3氏が立候補した水俣市長選は、2月5日投開票される。再選を目指す現職・江口隆一(えぐちりゅういち)候補(40)(無所属=自民、公明推薦)、前市教育長の新人・宮本勝彬(みやもとかつあき)候補(62)(無所属)、元会社員の新人・斉藤英雄(さいとうひでお)候補(66)(同)のうち、事実上の一騎打ちとなっている江口、宮本両候補が激戦を繰り広げている。主な候補の政策や横顔を紹介する。
(届け出順)
 ◇江口隆一候補40
 ◆働き盛り40歳「継続は力」
 25歳で県議となり、3期目途中に辞職して臨んだ前回市長選に36歳で初当選した。当時の九州の市長では最年少だった。衆院議員秘書時代を含め、政治生活は18年。国、県との太いパイプを強調し、「継続は力。40歳の今こそ働き盛り」と再選を目指す。
 1期目は財政健全化に取り組み、赤字経営が続いていた市立病院の黒字化に成功。市職員数削減では「意識改革と年間10億円の予算確保につながった」と自己評価する。今後の課題には雇用創出、少子高齢化対策などを挙げる。市営の一戸建て住宅を造り、3人以上の子どもを持つ家庭に低料金で入居してもらうなど「アイデアとやる気で問題解決に当たりたい」と話す。
 被害者補償の在り方が再び問われている水俣病問題については、「地元首長として国、県に被害者の要望を届けたい」。認定患者の入所施設の受け入れ拡大など独自の対策も検討中だ。
 民間業者が市内で計画を進める産廃最終処分場建設の賛否については「市に許認可権はなく中立」としていたが、告示直前に「反対」を明言。「市民のために全身全霊を尽くす」と話す。
 信条は「隠し事をしない」。尊敬する人物は田中角栄。米国人の妻と2人暮らし。
 ◇宮本勝彬候補62
 ◆産廃処分場に「断固反対」
 「今の水俣には元気が足りない。小さくても輝く街、ほっと安心できるぬくもりのある街をつくりたい。そのために市民の声をしっかり聞きたい」。市政刷新を求める市民団体の要請を受け、教育長職を辞して初の選挙戦挑戦を決めた。
 水俣発展のキーワードとして「環境」「福祉」「人材育成」を挙げる。市内で民間業者が計画を進める産廃最終処分場建設には「断固反対」の立場。「水俣病という悲惨な公害を経験しており、環境モデル都市を目指す街として造らせてはならない」と説く。
 当選すれば建設阻止のための対策室を設置し、市長、市民が一体となった反対運動を展開したい考え。国の構造改革特区制度を活用し「公害復興特区」を申請し、市長に処分場の許認可権を付与してもらうことも検討している。
 大学卒業後、中学の国語教諭として水俣第二中に赴任。市内4中学校で教べんを執り、3小中学校で校長を務めた。今も「先生」と呼ばれることが多い。熊本市出身だが、水俣は「心の古里」と話す。
 高校時代は野球部主将。教諭時代は熱血監督として指導に明け暮れた。2人の子どもは独立し、妻と2人暮らし。座右の銘は「人事を尽くして天命を待つ」。
 
 写真=江口隆一氏
 写真=宮本勝彬氏


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